個性はほどほどがいい!?
なんでも注文できるからと言われて舞い上がってしまい、普段なら絶対に考えない
ことや思いつかないことをダメもとで提案してみよう、と口にした結果、それが実現
されてしまうケースもありますが、必ずしも良い結果になるとは限りません。
その特権を存分に振りかざそう、余すことなく注文してやろうと調子に乗りすぎて
後から後悔するパターンは昔からよくあることです。
「なんでも言ってみてください、どんな注文でも承りますよ」との言葉に浮かれて
しまい、その時は名案だと思った閃きで何十年も暮らすことになるであろう住居を
奇抜な建造物に仕立て上げてしまう、そんな失敗は避けたいものです。
どんな設計でもアイデアでも実現されそうな注文住宅ですが、それはセオリーから
外れた無謀な建造物を生み出す可能性をもつことも忘れてはいけません。
記念すべき初めての我が家だから金色でピカピカの壁にしよう、と子供みたいな考えで
家中を眩しく輝く黄金色に仕上げてしまうと、2~3日は有頂天な気分で愉快に生活
できるかもしれませんがすぐに嫌になってくるでしょう。
もっと落ち着いて寛ぎたい、疲れて帰宅したのに家中が眩しくて身も心も休まらない、
こんな家で生活を続けていたらノイローゼになりそうだ、どうしてこうなった、
と一週間もしたらリフォームをしたくなります。
一週間はなんとか持ちこたえても2週間もすれば疲れやイライラもピークに達して、
わけもなく壁を叩いたり黙々とリンゴの皮を剥き続けたり、灯りを消して蝋燭の炎
をジッと見つめて過ごす時間が増えていくでしょう。
家中が金ピカ状態で2週間は無事乗り切ったとしても、一ヶ月もすればほとんどの人は
そろそろ精神的に追い詰められてきます。
自分の姿が映る鏡や窓ガラスを布で覆って何も映さないように細工をしたり、灯りは
極力付けないようにしてテレビのボリュームもなんとか聞き取れるギリギリまで音量
を下げて、電話が鳴っても玄関の呼び鈴が鳴っても対応せずに怯えるだけ、そんな
生活になってしまう危険が迫っています。
つまり奇抜すぎる空間で生活を続けることによるストレスが顕著に現れてくるのです。
一時の気の迷いで前衛的な注文住宅を完成させてしまうと取り返しの付かないことに
なりかねませんので、なんでも注文してよいからといって常軌を逸したデザイン
にするのはやめたほうが賢明です。
飽きのこないデザインを選ぶ
長く生活することを考えると、派手な見た目よりも心安らぐオーソドックスなデザイン でまとめたほうがいつまでも快適に暮らしやすい住居になります。 その時の流行を取り入れたいという部分もありますが、あまりにやりすぎても十年後 にはどうせ古臭いデザインになってしまいますし、自分の愛するテーマ、求める形状、 相応しい色使いも時の流れと共に変化していくでしょう。 いつまでも飽きがこない、この部屋にいるとさっきまでイライラしていたけど心が 静まる、ずっと一緒に苦楽を共にしてきた相棒と呼ぶに相応しいキッチン、そんな デザインや設備を実現させるのが注文住宅であり、勢いに任せて思いつきのアイデア を満載させたはいいけど住みやすいとは言えないよな、ではやや割高になったであろう わがままな注文住宅として失敗です。 いろいろ詰め込みたい、誰もやったことのない方法で快適な住みかを造りたい、 唯一無二の我が家を自慢したい、そんなワクワクもほどほどにして、先人達が蓄積 してきたノウハウに目を向けて「どんな間取りがこの家族に適すのか」「20年後に 今と同じ穏やかな気持ちでコーヒーを飲みながら新聞を読めるリビングはどんな デザインか」「お客さんがくつろいでおしゃべりできる空間になっているか」 といったことも考えたうえで家作りをしていかなければ、本当に立派な注文住宅には ならないでしょう。 基本に忠実、これを忘れないように。